研究概要 |
P式血液型と関係するP類似抗原の生合成について解明することを目指している。P類似抗原構造を合成するN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)転移酵素活性がヒト血漿や尿中に存在すること[Takeya et al.(1992),(1995)]、及びその酵素活性が本来はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)の転移を行う酵素(Ii抗原の合成に与る酵素)によって生じている可能性がある[Takeya et al.(1993),(1995)]ことを既に明らかにしてきた。 このように本研究は、血液型糖鎖生合成の全く新しい側面を明らかにするものであるが、それ故に従来はあまり問題にされなかった酵素基質純度についても厳しく再検討を迫るものとなった。すなわち、P類似抗原合成酵素活性値が、用いる標識UDP-GalNAc商品の種類によって大きく異なることが判明した[Takeya et al.(1995)]。その原因として、標識UDP-GalNAc中に微量ではあるが種々の程度に標識UDP-GalNAcがコンタミしていることが考えられる。 そのことを確かめる手段として、糖ヌクレオチドのレクチンカラムによるアフィニティークロマトグラフィーについて検討した。昨年度は、UDP-GlcNAc結合性レクチンとしてムジナタケレクチンを見い出した[Takeya et al.(1996)]。一方、UDP-GalNAc結合性レクチンとしてはビロードクサフジのレクチンが有効であることを見い出した[Takeya et al.(1997)Carbohydrate Letters 2,237-240]。さらに、本レクチンと糖ヌクレオチドとの結合定数を決定し、本レクチンの糖ヌクレオチド保護機能についても検討した[Takeya et al.,submitted]。これらのレクチンカラムによって吟味した、純度の高い糖ヌクレオチドを基質とした場合に、基質飽和の条件で、ヒト結漿中のP類似抗原合成活性はi抗原合成活性の約1/10であることが判明した。
|