研究概要 |
スーパーオキサイド産生剤として知られるパラコート(PQ)の毒性メカニズムの解明を目的とし,A549細胞を使用してとくに一酸化窒素(NO)との関連を検討した。 A549にcytokineを処理すると培地中のnitriteは増加し,PQが共存すると,その値はさらに有意に増加した。このPQによるcytokine共存下でのnitriteの増加は24hr,72hrでのincubateではPQ0.2mMで最大値を示したが,0.2mM以上ではPQの毒性が強くなりその増加は抑えられた。またPQ単独ではこのnitriteの増加は観察できなかった。NO生成阻害剤としてL‐NMMA,L‐NAME,L‐NAの影響について検討した結果,培地中のnitriteは有意に減少したが,LDH漏出は逆に高くなる傾向を示し,NOが細胞からのLDH漏出(細胞障害)を抑制することを示唆した。一方,NO供与剤として知られるニトロプルッシドNa(SNP)を0.5mMまで培地に加え,多量NO存在下での影響を検討した。その結果,nitriteはPQの有無に関わらずSNPの用量に比例して増加したが,LDHの漏出はPQ(0.2mM)存在下にのみ認められ,NOとsuperoxideによるperoxinitriteなど毒性の高い新たなラジカル種の出現が示唆された。 次に,PQがcytokineによるiNOSmRNAの発現増加をさらに増強するか否かを検討した。Northern分析の結果,PQ単独ではiNOSmRNAの発現は観察できなかったが,cytokine存在下ではその発現をさらに増強することが分かった。このmRNAの発現は3hrで始まり6〜9hrでピークになり18hrではほぼ消失した。これらは,培地中のnitriteで得られる結果と非常によく相関するものであった。
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