1)慢性関節リウマチ(RA)滑膜組織において、癌抑制遺伝子p53蛋白の検出を免疫組織化学を用いて行った。RA滑膜組織20例中16例にp53蛋白が検出された。さらに、RA滑膜炎の活動性に相関しp53蛋白の蓄積が認められた。変形性関節症、外傷性疾患の滑膜組織においては、p53蛋白は検出されなかった。 2)RA及び外傷性疾患培養滑膜細胞を用いてp53蛋白の検出を蛍光抗体法にて試みた。RA滑膜由来培養細胞において3-5%にp53蛋白陽性細胞が認められたが、外傷性疾患滑膜培養細胞においては陽性細胞は検出されなかった。一方、他の癌抑制遺伝子産物Rb蛋白は、RA滑膜及び外傷性疾患滑膜培養細胞の双方において検出され、その頻度に有意差は認めなかった。 3)培養滑膜細胞中の蛋白を35Sを用いてラベルした後、蛋白抽出し、抗p53蛋白抗体と免疫沈降を行った。RA滑膜培養細胞においては、外傷性疾患滑膜細胞あるいは癌細胞celllineと比較し、p53蛋白よりは強く検出された。また、RAではp53蛋白近傍にextra bandが認められ、p53蛋白と結合する蛋白の存在が示唆された。 4)上記培養細胞より、 (1)DNAを抽出し、p53mutationのhot spotを含む領域でのPCR-SSCPを行った。RA滑膜細胞では、明らかなconformationの変化は認められなかった。 (2)mRNAを抽出し、p53のfunctional analysisを行ったが、RA5例中いずれもp53のmutationは認められなかった。 5)今後、RAでのp53蛋白の機能異常とサイトカイン発現等の病因との関連を追究していく予定である。
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