研究概要 |
抗SS-A/Ro抗体高値のシェ-グレン症候群患者の小唾液腺生検組織リンパ球よりファージ抗体ライブラリーを作成し、60-kd Ro蛋白に対するパンニングを4回繰り返し、クローン化して可溶性リコンビナントFabを作成し、免疫学的検討を行った。数十クローンを調べたうち数クローンに60kd Ro蛋白に対する結合が証明できた。うち、一人の患者から得られた3つのFabクローンは非常に低濃度(0.1-.02μg/ml)でRo蛋白に対する結合が証明され、1-2μg/mlでプラトーに達した。また、この3つのクローンの結合の特異性について調べたところ、DNAやβ2-グリコプロテインlなどの自己抗原、その他の蛋白抗原と反応せず、結合の特異性も確認された。以上、抗SS-A抗体高値の患者の末梢リンパ球よりファージディスプレイ法で高親和性の抗SS-A/Ro抗体Fabが作成できた。この3クローンの抗体V領域遺伝子の解析を次に行った。その結果、重鎖V領域(VH)、軽鎖V領域(VL)ともgermline遺伝子から10個以上のアミノ酸の置換が認められ、体細胞突然変異の結果と推定され、抗原刺激による抗体産生の結果であることが推測された。しかも、3クローン中2クローンのVHはDP73由来であり、CDR3部分を含めきわめて相同性が高いことがわかった。一方、VLも3クローン中2クローンがまったく同一(V_κ3ファミリーに属するL6由来)であることが判明した。このように抗体遺伝子の解析から3クローンのVH,VLの使用はきわめて限定されていることが推定された。以上の結果は、この患者の唾液腺浸潤リンパ球中の抗SS-A/Ro抗体産生クローンがオリゴクローナルであることを推測させる。以上の実験結果よりファージディスプレイ法により、自己抗体産生細胞を含むheterogeneousな末梢リンパ組織から直接mRNAを抽出して、ファージ抗体ライブラリーを作成し、パンニングにより目的の自己抗体を分離できることがわかり、この方法が自己抗体研究の強力な方法になりうることが明らかになった。
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