抗DNA抗体高値のSLE患者から、抗二本鎖DNA抗体の分離を行い、反応性、遺伝子解析を試みた。活動期SLE患者より末梢血リンパ球を分離し、mRNAの抽出、cDNA合成後、同様の方法でFab-ファージライブラリーを作成した。固相化DNAとパンニングを行い、DNAに結合したFab-ファージを大腸菌に再感染させ、再びパンニングを行い、DNAに結合するFab-ファージを濃縮した。合計5回のパンニングを行った後、大腸菌に導入してクローン化したのち、リコンビナント可溶性Fabを産生させた。100以上のFabクローンについて調べた結果、固相化DNAに結合する8個のクローンが得られた。これらのクローンについて、二本鎖DNAに特異的に結合するかどうかを、クリチジアアッセイで調べた。その結果、8個のうち6個のFabクローンはクリチジアに反応し、抗二本鎖DNA抗体であることが証明された。Fab濃度を100ng/mlに合わせ、希釈列を作ってクリチジアへの反応性を調べたところ、3個のクローンは1000倍希釈でも明らかに陽性であり、高親和性の抗二本鎖DNA抗体であることが証明された。これらの8個のFabクローンの抗体遺伝子の解析を行ったところ、軽鎖可変部遺伝子は様々なgermline遺伝子に由来していたが、重鎖可変部遺伝子(VH)はすべてVH26由来であり、CDR3も良く似ていた。これらの結果か、一個のVDJ再構成を経たB細胞から、体細胞突然変異の結果、8個のFabクローンが生じた可能性が示された。クローンの系統樹では、一個のB細胞から3つのグループに別れ、同じグループでは、変異の進んだクローンほどDNA結合活性が高いことが示された。また、今回の結果から、このSLE患者の抗DNA抗体産生細胞は非常に限定されたクローンから発生していることを示唆している。
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