補体はその活性化の過程でさまざまな分解産物を生じ、それらが感染の防御や免疫反応に関与している。補体系は約30の活性化をになうタンパクと約10の補体受容体より形成されている。これら補体成分が活性化の過程で生じるBaの構造ならびに機能解析を中心として、我々は、補体タンパクの感染・免疫におよぼす役割を解析している。 (1)Baの精製と機能解析 Baは補体B因子の分解の結果生ずるタンパクで、その機能解析のためには大量の精製したBaが必要である。従来、Ba精製のためには補体系の他の多くの精製したタンパクが必要であり、それらのin vitroでの反応も多くの複雑なステップが必要であった。我々は遺伝子工学的にBaを産生させる系を確立し容易に大量のBaを得ることにより、Baの機能解析を行うことを目的とした。B因子cDNAに変異を導入してCHO細胞によりBaを大量に発現させることに成功した。さらに精製をすすめB細胞、T細胞に対するBaの機能解析を進める。 (2)補体C6、C7、C9欠損症の遺伝子解析 補体欠損症患者では易感染性が生じるが、原因となる遺伝子異常についての解析は進んでいない。B因子の活性化と関連の深い他の補体成分の機能解析も進めている。我々は世界で初めて、ヒト補体C6欠損症ならびにC7欠損症の原因を明らかにした。前者については、2種類の1塩基欠失が原因であり、後者については1塩基置換によるnonsensemutationと2塩基欠失が原因であり、C6、C7分子の機能的に重要な部分が明らかになった。さらに日本人で1000人に1人と極めて多いC9欠損症についても解析を進め、この遺伝子異常の原因の90%が1塩基置換によるnonsensemutationによること、そしてこれがfounder effectによることを明らかにした。
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