単鎖抗体とT細胞受容体g鎖の融合遺伝子を導入したCTLにおいては、単鎖抗体が腫瘍関連抗原を認識して結合し、そのシグナルがT細胞受容体γ鎖を介して細胞内に入り、T細胞が活性化されて殺細胞効果を示すことが期待される。HLA非拘束性であり、個々の患者の免疫応答レベルに関係なく効果の期待できる点が特長である。 本研究では、単鎖抗体として我々の教室で確立した抗MUC1ムチンモノクローナル抗体MUSE11のV_HおよびV_Lを用いた。RT-PCR法によって、ハイブリドーマよりV_HおよびV_LcDNAを、ヒトT細胞よりg鎖cDNAをそれぞれ得、レトロウイルスベクターPG1ENに組み込み融合遺伝子発現ベクターとした。パッケージング細胞は、スタンフォード大のノ-ラン博士との共同研究で、phoenix細胞(AとE)の供与を受けた。この細胞は、一過性遺伝子導入法で十分なウイルス力価が得られるため、短時間でT細胞の感染実験を行うことが可能である。遺伝子導入するT細胞としては、北海道大学癌研今井博士によってEBウイルス感染患者末梢血より樹立された、EBウイルスにて不死化したと考えられるT細胞株を用いている。現在順調に遺伝子導入実験を進めている。
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