研究概要 |
[目的]1)同一のヒト免疫系をできるだけ多くのSCIDマウスに均一に再構築するための方法論を確立し、2)各種抗接着因子抗体のヒトB細胞活性化に与える影響を解析する。 [結果]1)i)ヒトリンパ球採取の方法:通常の末梢静脈血採血(一回100ml)により約1.5x10^8個のリンパ球が採取され、最大で約10匹のSCID-huマウスが作成可能であるが、より効率的なリンパ球採取法はリンパ球分離装置(リンファフェレ-シス)によるものである。一回(400mlの血液よりリンパ球分画を分離)で最大6x10^8個のリンパ球採取が可能であり、約30匹のSCID-huマウスを作成可能となる。ii)ヒトリンパ球生着の効率化:SCIDマウスへのヒトリンパ球の生着率は放射線照射(3Gy)と抗アシアロGM1抗体(抗マウスNK細胞)で前処置することにより飛躍的に向上することが示された。実際移植1ヶ月後のマウス血清中のヒト免疫グロブリン値は上記処置にて約10倍増大した。前処置を施行することにより、B細胞活性化解析に必要な移植ヒトリンパ球数は1.5x10^7個/マウスで充分であることが確認された。2)T-B細胞相互作用に関与する各種細胞間因子に対する抗体(抗DR,抗LFA1)のB細胞活性化に与える影響をSCID-huマウスにおいて解析した。抗DR抗体(L243)及び抗LFA1α(CD11a)抗体ともに移植2週後のヒト抗体産生を著明に抑制し、またその抑制効果は抗体のFc部分を除いたF(ag')_2にても認められ、その抑制効果が単に細胞障害作用によるものでなくT-B細胞相互作用を阻害した結果であることが示唆された(第24回日本臨床免疫学会にて報告)。以上よりa)SCID-huマウスにおいてもヒトT-ヒトB細胞相互作用がヒトB細胞活性化に重要であり、b)その相互作用を阻害することによりB細胞活性化をコントロールできることがin vivoの系で明らかにされた。現在SLEおよびRA患者の臨床検体を用い、その臨床応用の可能性につき検討を加えている。
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