研究概要 |
慢性関節リウマチ患者の関節液の塗抹標本における肝細胞増殖因子(HGF)の特異的モノクローナル抗体を用いた免疫化学染色法にてHGFを産生している細胞は,関節内に浸潤してきた多形核球(好中球)であることが確認された。また、手術症例より得られたリウマチ性に増殖のみられた滑膜について同様の検討を行った。滑膜に新生してきた毛細血管周囲にわずかに検出されたが,予想に反して好中球は乏しく組織内に浸潤している細胞は単核球優位で,ほとんどHGFは検出されなかった。同様にin situ hybridyzationでは優位な所見が得られなかった。内因性コントロールを用いた定量的RT-PCR法では関節液中の多核球での検討を行うと病勢に関係なく常にmRNAが検出され,好中球内に誘導がかかるとことよりもむしろ遊走浸潤してくる細胞数が増加することによりHGF活性が増加していると考えられた。しかし急速に関節水腫が増加してきた時期の一部の症例より採取した検体において検出されるmRNAの多いものがあり,病気の超急性期においては増加している可能性がある。骨髄においては骨髄球系以外にもストローマ細胞からもHGFが産生されており,骨髄内でのHGF産生系は単一ではなかった。末梢血よりも好中球を分画して検討をしたところ,関節液中の好中球よりも弱いながら,HGF産生が見い出された。これらのことより,好中球が種々のサイトカインにより活性化され関節腔中に遊走浸潤する過程においてHGF産生能を獲得するものと考えられた。
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