研究概要 |
慢性関節リウマチ(RA)の関節滑膜での炎症病態を解明するために、これまで、RAの患者から採取した滑膜組織より得られた、滑膜細胞や浸潤リンパ球を限界希釈法によりクローン化し、樹立した各種細胞株の機能と特徴を解析してきた。今回、同様のRA滑膜細胞のクローン化の結果、一人の活動期RAの患者(YK)から、EB(Epstein-Barr)ウイルス(EBV)が感染した滑膜細胞株、DSEK細胞株を樹立した。かかるDESK細胞株は、形態学的にも、免疫組織学的にも、線維芽細胞様(B型)滑膜細胞由来であり、その細胞表面抗原は、CD44,58およびHLA-DR抗原が陽性であり、CD11a,11b,11c,14,19,20,21,22,23,54,62L,106,sIgMおよびHLA-DQ抗原は陰性であった。この、fibroblastoid DSEK滑膜細胞は、サザンブロッテイングとイムノブロッテイングによって、EBV-DNAおよびEBNA(EBV nuclear antigens)-1,-2,LMP(latent membrane protein)-1を有することが証明された。さらに、DSEKクローン化細胞は、無刺激で培養上清中にIL10,TGF(tansforming growth factor)β1,およびbFGF(basic fibroblast growth factor)の有意な産生を認めた。以上、RAの滑膜細胞のクローニングにより、EBV遺伝子発現が証明されたクローン化B型様滑膜細胞株(DSEK)を樹立し、かかる細胞の機能と、その役割を究明することにより、RAの滑膜での病態解明の一歩につながるものと考える。
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