研究概要 |
1.天然抗炎症剤(グリチルリチン,GL)の細胞内結合性タンパク質の精製 GLの細胞内特異結合性タンパク質(gb-protein)を明らかにする目的で,各種細胞抽出画分よりGL-affinityカラムとgb-proteinが吸着するイオン交換体カラムの組み合わせでgb-proteinを精製した.精製gb-proteinの一次構造解析から,gb-proteinを同定した.その結果,gb-proteinとして,プロテインキナーゼ(PKase)の1種であるカゼインキナーゼII(CK-II),lipoxygenase3(LOX-3)や転写調節因子の1種であるグロコオルチコイド様受容体(GR)などが同定された. 2.gb-proteinの生理機能 gb-prteinであるCK-IIとLOX-3に対するGLの作用をin vitroで解析した.その結果,(1)GLは-II活性を濃度依存的に阻害するがLOX-3活性を余り阻害しないこと,(2)LOX-3はCK-IIによってリン酸化されること,および(3)LOX-3はCK-IIによってリン酸化されると活性化されることなどが明らかになった.これらの解析によって,GLはCK-IIによるリン酸化を介したLOX-3の活性化を阻害することを明らかにした. 3.GLの抗炎症作用機構 平成8年度の解析結果と現在までの解析から,GLの抗炎症作用は,(1)アラキドン酸カスケードの開始反応を触媒する酵素(phospholipase A2)の阻害,(2)LOX-3の活性化阻害による炎症性ケミカルメデエタ-産生の抑制,および(3)PKaseによる転写調節因子のリン酸化を介した転写の抑制などによって発現されることが明らかになった. さらに,GL結合性LOX活性のみがフラボノイド系化合物によって選択的に阻害されることを明らかにした.
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