研究概要 |
1.グリチルリチン(GL)の受容体とその生理活性に関する解析(大槻) GL-affinityカラムを作製し,GLに感受性な細胞やウイルス感染細胞の抽出画分,アレルギー性疾患の血清およびリウマチ患者関節液より各種GL結合性polypeptide(gbP)を精製した。精製されたgbPの部分アミノ酸配列の解析から,gbPの遺伝子産物を同定した。その結果,(1)細胞内のgbPとして炎症性14kDa phospholipase A2(14kDa sPLA_2),核内ステロイドホルモン様receptor(転写調節因子),5'-lipoxygenase(5'-LOX)およびプロテインキナーゼであるcasein kinase II(CK-II)など,(2)血清成分のgbPとして補体成分C3,serine proteaseおよびtransaminaseなどが同定された。さらに,(3)リウマチ患者関節液からは,14kDa sPLA_2,55kDa hyaluronidaseやserine protease以外にもIgGとIgMのV部分の分解産物がgbPと同定された。特に,GLは14kDa sPLA_2と5'-LOXの活性を低濃度で選択的に阻害することから,GLの抗炎症作用はこれら2つの酵素活性の選択的阻害によると推察された。 2.ウイルス増殖に対するGLの作用に関する解析(田中) HIV-1感染細胞系では、GL結合性PKaseであるCK-IIが活性化される。活性化されたCK-IIは,細胞核内の転写調節因子やシグナル伝達因子を特異的なリン酸化して転写を作動(促進)する。GLおよびGL誘導体は,このCK-IIによるリン酸化を介した情報伝達系を抑制することを明らかにした。 3.GLの生理活性発現と化学構造に関する解析(川口) GLによって選択的に阻害される14kDa sPLA_2および5'-LOXに対するGLの結合部位と活性阻害機構を解析した。その結果,双方酵素ともGLのグルクロン酸部位に結合し,トリテルペノド部位が活性阻害に関与することを明らかにした。従って,誘導体の合成はトリテルペノド部位により選択性が発揮される化合物を付加合成することが重要と判断された。
|