研究概要 |
今年度はtRNAおよびtRNA関連蛋白に対する抗体の検出とその臨床的意義を検討した。 1,膠原病が疑われ抗核抗体検索を依頼された患者血清1472例を^<32>P-標識HeLa細胞抽出物を用いた免疫沈降法でスクリーニングした。その結果,tRNAを沈降する血清を40例見い出した。 2,^<35>Sメチオニン標識HeLa細胞抽出物を用いた免疫沈降法とHeLa細胞成分を用いた免疫ブロット法で抗原蛋白成分を分析した。その結果,14例は抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体陽性(抗Jo-1;4例,抗PL-7;1例,抗PL-12;3例,抗EJ;4例,抗OJ;2例)であった。 3,1で確認された40例の血清について,^<32>Pで標識後,フェノール抽出で脱蛋白したHeLa細胞tRNAを用いて免疫沈降法を行なった。その結果,tRNA自身を認識する血清を8例認めた。 4,(1)抗ARS抗体陽性患者は全例,多発性筋炎または肺線維症患者だった。 (2)抗ARS抗体以外の26例中19例は全身性エリテマトーデス(SLE)またはシェ-グレン症候群(SjS)で,ともに再発を繰り返す環状紅斑が特徴的であった。またSLEは非腎症が特徴的であった。 (3)tRNA自身に対する抗体が陽性である患者は全例,環状紅斑を呈するSLEまたはSjSであった。 以上,膠原病におけるtRNA沈降抗体はtRNA自身,ARSおよびその他のtRNA関連蛋白に対して多彩な反応性を示し,それぞれ特定の病像と関連することが示された。
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