研究概要 |
短期間に大量のアレルゲンを投与する急速減感作療法の成績から、治療早期にTh2型細胞の無応答性が誘導できる知見を得た。この無応答性のメカニズムを解析する目的で試験管内で種々のアレルゲン量を投与し、T細胞がどのように反応するかを検討した。ダニおよびネコアレルゲンに過敏な喘息患者より末梢血単核球を採取し、抗原量による反応性の相違を検討した。低濃度のアレルゲン投与では増殖反応を惹起しないが、IL-4産生を強く誘導し、さらに至適アレルゲン量で二次培養すると強い二次増殖を示し、IL-4,IL-5を産生した。一方、大量抗原を投与した場合には、一次培養時高い増殖反応を示すが、二次培養では増殖反応を示さず、IL-4,IL-5,IL-10,IFN-γとTh1,Th2サイトカイン両者とも産生しなかった。同様の反応性は猫毛の主要アレルゲンであるFeldI特異的Th2細胞株でも示された。大量抗原曝露後無応答になったT細胞の応答性はIL-2の投与で回復し、少なくとも一部の細胞はいわゆるアナジー状態に陥っていることが示唆された。無応答に陥った細胞はCD28の発現の低下は認めず、さらに抗CD28抗体の投与によっても無応答性は解除できなかった。FeldI高濃度曝露後、抗原特異的T細胞株を樹立し、FeldIの主要エピトープであるPC1とPC2の反応性を検討したが、通常の方法で樹立した場合と主要エピトープに対する反応性に差異はなかった。以上より、大量アレルゲンを投与することにより、Th2型細胞にいわゆるアナジー類似状態を誘導で急速減作療法でTh2型細胞の無応答性を誘導できた一つの要因であることが示唆された。またアレルギー惹起性の主要エピトープ反応性T細胞に大量の主要エピトープペプチドを投与することによりアナジーが誘導できることが明らかになった。
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