研究概要 |
昨年度の研究結果から,フォスフォロチオエ-ト型オリゴヌクレオチド(S-oligo)の抗ヘルペス効果のメカニズムの一つに単純ヘルペスウイルスI型(HSV-I)の侵入を阻害している可能性が、示唆されたことから,HSV-Iの細胞への吸着阻害について検討した.NT58(5'GCG GGT GAG CCC C3')の配列を有するS-oligo並びにフォスフォジェステル型オリゴヌクレオチド(D-oligo)をHSV-I感染-15分前に細胞に作用させ,その後HSV-Iを4℃にて2時間感染させた.HSV-Iを洗浄した後,37℃にて24時間培養し,HSV-I量を測定した。S-oligoでは,明かなHSV-I吸着阻害効果が認められたものの,D-oligoではHSV-Iの吸着阻害効果は認められなかった.これより、S-oligoのHSV-Iの吸着阻害効果は、明かとなった.この配列はGrichな配列を含んでいることから,HSV-Iの吸着阻害効果が,S-oligoに由来するものか,連続したG配列に依存するものどうかについて検討した.連続したG配列を含む8merのS-oligoのHSV-I吸着阻害効果を検討したところ,濃度依存性にHSV-Iの吸着阻害が認められた.この時,アンチセンス配列でないにも関わらず,抗ヘルペス効果も認められた.更に,連続したG配列を崩したところ,HSV-Iの吸着阻害効果もなくなり,抗ヘルペス効果も消失した.これより,HSV-Iの吸着阻害効果は連続したG配列に依存していることがわかった.これらの効果は配列そのものより,S-oligoの高次構造に由来することも考えられ,CDスペクトラムにより,G4重鎖構造の有無を検討した.連続したG配列を有するS-oligoは,カリウムイオンの存在下で,G4重鎖構造をとることが明かとなった.連続したG連続を崩すことにより,G4重鎖構造はとらなくなった.これより,連続したG配列を含む場合は,G4重鎖構造をとり,この構造に起因して,HSV-Iの吸着阻害が起こり,抗ヘルペス効果を示すものと考えられた.
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