研究概要 |
ベーチェット病は、ぶどう膜炎、口腔内アフタ、結節性紅班などの皮疹、および陰部潰瘍の4主要症状がいくつか組み合わされて発症する、原因不明の難治性の全身性炎症性疾患である。 われわれはベーチェット病の発症機構を解明するために、ベーチェット病でぶどう膜炎を発症している患者(HLA-B51保有者を含む)2名の前房水および硝子体液より、18種類のCD3+CD4+CD8-と4種類のCD3+CD4-CD8+のクローン化T細胞を樹立した。また同じ患者の末梢血より、16種類のCD3+CD4+CD8-のクローン化T細胞を樹立した。さらに、コントロールとして、健常人3名の末梢血から18種類のCD3+CD4+CD8-と4種類のCD3+CD4-CD8+のクローン化T細胞も樹立した。これらのクローン化T細胞を培養・維持し、研究に用いた。 クローン化T細胞について、各種サイトカイン(IL-1α,IL-2,IL-3,IL-4,IL-6,IL-8,IL-10,TNF-α,IFN-γ,GM-CSF)のin vitroで産生量をELISA法で測定したところ、ベーチェット病患者のクローン化T細胞はコントロールと比べて、IL-8の産生量が統計学的に有意に高いことが判明した。また、TNF-αの産生量もベーチェット病患者の前房水および硝子体液由来のクローン化T細胞はコントロールと比べて高かった。この結果より、ベーチェット病におけるぶどう膜炎の発症機構には、病気の局所の浸潤細胞が産生するIL-8が深く関与していることが示唆された。 ベーチェット病のぶどう膜炎の患者の治療に用いられている、ステロイド、コルヒチン、非ステロイド系消炎剤、免疫抑制剤が、ベーチェット病患者由来のクローン化T細胞のIL-8産生に与える影響を解析したところ、ハイドロコーチゾンとFK506には抑制効果が認められた。この結果は、ベーチェット病の治療薬を開発していくために重要な情報であると考えられた。
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