研究概要 |
免疫学機序による胆管炎(ヒトでは原発性胆汁性肝硬変やautoimmune cholangiopathyなど)の病態をin vivo, in vitroで検討した。 1.in vitroの検討:(1)自己免疫性胆管炎では胆管細胞にMHC classII分子が異所性に発現しており、胆管細胞が抗原提示細胞となりうるか検討した。正常ラット培養胆管細胞にIFN-γとIL-4を加えるとmRNAレベルおよび蛋白レベルでMHC classII分子が誘導された。しかしB7-1,B7-2はmRNAレベルや蛋白レベルでその発現を確認することはできなかった。またIFN-γとIL-4で刺激した培養胆管細胞を卵白アルブミンを用いてプライミングし、卵白アルブミンで免疫した同系ラットのリンパ球との混合培養によりリンパ球刺激試験を行ったが、結果は陰性であった。以上より、自己免疫性胆管炎などでみられる胆管細胞の異所性MHC classII分子発現はサイトカインの誘導によるもので、胆管細胞の抗原提示能とは無関係と考えられた。(2)自己免疫性胆管炎では周囲にマクロファージが浸潤しているが、マクロファージの産生するTNF-αの影響を培養胆管細胞を用いて検討した。TNF-αは細胞傷害性は示さないが、一過性に胆管細胞間結合を障害し蛋白質の透過性が上昇することを報告した。 2.in vivoの検討:(1)肝では胆管細胞のみに局在するcarbonic anhydraseII(CA-II)を免疫するとBalb/cマウスに胆管炎が観察された。さらにCA-IIで免疫されたBalb/cマウスのリンパ球を移入すると同様に胆管炎が生じた。(2)自己免疫性胆管炎患者の血清中に抗CA-II抗体が認められた。以上より、自己免疫性胆管炎を誘導する蛋白として、胆管細胞内のCA-IIが可能性としてあげられた。
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