1.DNAミスマッチ修復遺伝子およびAPC遺伝子の診断システムの開発 (1)ヒトDNAミスマッチ修復遺伝子の診断システムの開発 ヒトDNAミスマッチ修復遺伝子hMLH1の遺伝子機能診断法を開発した。方法は患者末梢血リンパ球からRNAを抽出、これをRT-PCR反応によりhMLH1 cDNAを増幅する。増幅したhMLH1を、特異的ギャップベクターと共に野生型出芽酵母に導入・発現、酵母ミスマッチ修復機能に対するドミナントネガティブ効果で判定する方法である。平成8年度の変異解析の結果を踏まえて、さらに患者由来の胚細胞変異25種類について検討した。その結果、23種類の変異がこのアッセイ系で機能を消失した変異と判定できた。更に2種類の遺伝子多型について調べた結果、これらは予想どおり正常機能を保持していた。従って、この方法はhMLH1変異の大部分を検出しうる新しい遺伝子機能診断法となりうると考えられる。 hMSH2遺伝子については、下記のAPC遺伝子診断法と同様にストップコドンアッセイ法を用いることにより大部分の変異を検出できるものと考えられる。 (2)APC遺伝子の診断システムの開発 APC遺伝子の変異の大部分はナンセンス・フレームシフト異変であることから、これらの変異を特異的に検出できる方法、ストップコドンアッセイ法を開発した。この方法は、患者APC遺伝子翻訳領域をPCR法で増幅後、特異的ギャップベクターと共に野生型出芽酵母に導入・発現、挿入遺伝子断片下流のURA3遺伝子による融合蛋白質形成を、酵母の表現型(Ura+/-)で判定する方法である。本年度はマーカーとなるURA3遺伝子をGFP遺伝子に改良、アッセイ系の簡便化に成功した。ストップコドンアッセイ法をヒトDNAミスマッチ修復遺伝子hMSH2や家族性乳癌遺伝子BRCA1およびBRCA2に応用した。 2酵母アッセイ系を用いた臨床検体のスクリーニング 上記アッセイ系を用いて、ヒトDNAミスマッチ修復遺伝子hMLH1およびhMSH2変異について遺伝性非ポリポ-シス性大腸癌患者7人および家族性大腸ポリポ-シス10家系、若年発症乳癌72人に応用、塩基配列決定法との比較で本法はほとんど全ての遺伝子変異を検出する能力があることを確認した。
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