研究概要 |
動物実験モデルならびに培養細胞を用い、ウルソデオキシコール酸(UDCA)の経口投与に際して起こるAA代謝への影響を主としてII型PLA_2に対する影響として明らかにし、大腸癌発癌に対する抑制機序を解明することを目的として検討を行った。 【方法】(1)AOM誘発ラット大腸発癌モデルに対し、UDCA混餌食を摂取させ、発癌物質投与後12週間までの大腸粘膜中のaberrantcryptfoci(ACF)の発生頻度を経時的に検討し、さらにAAカスケードとの関わりに着目し検討を行った。 (2)UDCAにII型PLA_2発現を抑制させる直接的な作用があるか否かを検討するためにHepG2細胞を用いた基礎的な検討を行った。 【結果および考察】AOM誘発ラット大腸発癌モデルにおいて、UDCAの経口投与はACF数の低下をもたらした。これは大腸発癌の比較的早期でのUDCAによる発癌制御の可能性を示唆するものと考えられた。発癌物質投与後の大腸組織における早期のPGが増加しており、他の律速酵素mRNA発現との比較から、II型PLA_2の発現増強によるAA遊離の亢進がこれに関与していると考えられた。さらにUDCAの経口投与により、発癌物質投与後の大腸組織における一過性の急激なII型PLA_2の発現増強が減弱していた。また、HepG2細胞を用いたin vitro実験系において、IL-6,TNF-α添加によりII型PLA_2が誘導され、この誘導はUDCAの添加によりmRNAレベルから抑制された。デキサメタゾンのII型PLA_2抑制効果に対してUDCAは相加的に働き、UDCAの作用機序として、GRを介した作用以外の機序が存在することが示唆された。 【総括】今後II型PLA_2の大腸癌発癌における役割についての解明と、さらにUDCAをはじめとする胆汁酸のII型PLA_2発現に対する制御機構について検討が必要であろう。
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