研究概要 |
本研究では,空旗期および食後期の消化管機能の調節においてNitric Oxide(NO)がいかなる役割を果しているかを検討した. 1.空腹期運動およびモチリン放出におけるNOの役割 空腹期には運動のみられない休止期を挟み約100分間隔で強収縮運動が観察されるが,NOの合成阻害剤によりその運動様式がどう変化し,強収縮運動を調節するモチリンの放出がいかなる影響を受けるかについて検討した.雑種成犬の消化管にフォーストランスデューサーを縫着し,意識下の状態で実験を行った.休止期に経静脈的にNO合成阻害剤であるN^G-nitro-L-arginine(L-NNA)を投与し,空腹期運動およびモチリン濃度の変化を観察した.本研究の結果,L-NNAは休止期の時期に空腹期強収縮様運動を惹起し,これがモチリンの放出を介したものであることが判明した.この事実は,内因性のNOが強収縮運動の発現抑制に重要な役割を担っていることを示唆した.以上の研究成果を各種学会で発表し,現在その内容を英文雑誌に投稿中である. 2.固形物と液体の胃排出調節におけるNOの役割 本研究は平成9年度に予定していたが,胃排出の新規測定法を8年度に完成しえたので先に実施した.液体の胃排出の指標として非吸収性のマーカー,固形物はそれ自体の乾燥重量を利用した.意識下のイヌにL-NNAを投与し,液体と固形物の胃排出がどのような影響を受けるかを検討した.その結果,NO合成阻害剤によって胃運動は亢進するものの,逆に胃排出は液体,固形物共に著明に抑制された.この事実は,内因性のNOが胃の協調した蠕動運動に関与し,胃排出の正常な調節に重要な役割を担っていることを示唆した.これらの成果を各種学会で発表し,論文としてAmerican Journal of Physiologyに受理された.
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