研究概要 |
本年度の研究においては、食後期の消化管運動,胆汁の排出ならびに膵外分泌の調節におけるNitric Oxide(NO)の役割について検討した. 雑種成犬を用い,消化管運動を直接測定できるフォーストランスデューサーを慢性的に縫着し,さらに,近位および遠位十二指腸内にカニューレを装着し,意識下の状態で実験を行った.近位十二指腸内に一定濃度の非吸収性のマーカーであるphenolsulfonphthalein(PSP)を持続注入し,遠位十二指腸のカニューレより一定時間間隔で腸液を採取した.この腸液内のPSP濃度の希釈率より十二指腸内の容量を算出し,各種パラメーターの単位時間当たりでの絶対排出量を求めた.実際の実験では,経静脈的にNOの合成阻害剤であるN^G-nitro-L-arginine(L-NNA)を投与し,食事摂取後の消化管運動,胆汁酸の排出ならびに膵外分泌が如何なる影響を受けるかを検討した.消化管の収縮運動はデーター解析用コンピューターに取り込み,収縮力の変化を解析した.また,同時に採取した腸液内の胆汁酸濃度ならびにアミラーゼ濃度を吸光度計で測定し,L-NNA投与の有無で胆汁酸やアミラーゼの排出がどのような影響を受けるかを検討した.以上の実験から,内因性のNOの合成を阻害すると,用量依存的に胃運動の亢進が観察されたが,一方,膵外分泌の有意な抑制が認められた.胆汁酸の排出も抑制傾向が観察されたが,有意差は認められなかった.以上の結果から,内因性のNOは生理的な食後の胃運動ならびに膵外分泌や胆汁酸の排出の調節に深く関与していることが示唆された.
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