Trinitrobenzen sulufonic acid(TNBS)の注腸投与にて作製したラット大腸炎モデルを用い、食物繊維が腸内細菌叢の発酵により生じる短鎖脂肪酸のn-butyric acidを注腸前投与したところ、生理的食塩水を注腸前投与した対照群に比較して潰瘍の面積及び炎症性細胞の浸潤、粘膜下層の肥厚そして出血といった組織病理学的所見に於て有意な抑制効果を有することが明らかにされた。次にn-butyric acidのTNBS誘発性大腸炎に対する抑制効果の機序を明らかにする目的で、両群の大腸炎組織中に於ける myeloperoxidase(MPO)activity濃度の比較検討、interleukin-1β(IL-1β)濃度の比較検討をしたところ、n-butyric acid投与群では両者とも対照群に比して有意に低下していた。更にn-butyric acidに傷害物質に対する直接的なバリアーとして重要な粘膜からのmucineの産生を増加させる作用があるかを検討したところ、有意に増加させる効果があることも明らかにされた。 以上の研究成果より、食物繊維の発酵によって生じるn-butyric acidには大腸炎を予防する効果を有する可能性があることを示した。このことにより、日常の食生活において近年急激に増加傾向を示している潰瘍性大腸炎といった特発性大腸炎の増悪再燃予防として食物繊維の積極的な摂取が効果的であることが示唆された。
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