研究概要 |
非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)であるインドメサシンの肝細胞増殖因子(HGF)発現に与える影響を胃及び大腸の人線維芽細胞を用いて検討した。これらの線維芽細胞はHGFを産生していた。各種のプロスタグランジン(PG)で線維芽細胞のHGF産生は亢進した。その強工はPGE,≧PGE_2>PGI_2analogueであった。dibutyn‘e cAMP及びコレラトキシンも著明に、HGF産生を亢進させた。これらの細胞にはE9_2及びEP_2PGE受容体が発現しており、PGE,はこれらの細胞のcAMPを増加させた。従ってPGのHGF産生亢進作用は、PGE受容体を介しcAMPをsecond messengerとして発揮されると考えられた。次に内因性PGの産生を検討した。FGF,TFG∂,EGF,TNF-∂,IL1-βのみが著明に内因性PG産生を刺激した。IL1-βは、又PG合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ(COX)のサブタイプのうちCOX-1は誘導せずCOX-2を誘導した。インドメサシンはIL1-βによるPGE_2産生亢進を完全に抑制した。IL1-βはHGFも誘導したが、これはインドメサシンにより抑制された。これらの結果はNSAIDの作用としてPG産生を阻害する事によって増殖因子の増加が抑制される可能性を示しており、NSAIDによる胃粘膜障害やNSAIDによる大腸癌発生抑制の機構の一部を説明する可能性のある知見と考えられる。
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