超音波内視鏡(EUS)と膵液の遺伝子診断を組み合わせた一連の内視鏡下の検査が、小膵腫瘤性病変の検出とその鑑別診断にいかに有用であるかを明らかにしようとした。対象は、腹痛などの自覚症状、検診でのチェック、膵酵素や腫瘍マーカーの上昇、糖尿病の悪化などより膵の異常が疑われた患者176例であり、EUSにより膵の一次スクリーニングを行った。腫瘤や膵管拡張などの異常エコーが検出された場合、内視鏡下に純膵液を採取し、PCR-RFLP法によりK-rasコドン12の点突然変異を検索した。同時に、通常のエコー(US)、コンピューター断層撮影(CT)、内視鏡的膵管造影(ERCP)などの各種画像診断を施行し、腫瘤検出能をEUSと比較した。その結果、1)EUSにより36例(20%)の充実性膵腫瘤が検出された。うち19例は膵癌であり、腫瘍径1〜2cmの小膵癌が7例が含まれていた。また、17例は、炎症性膵腫瘤で、そのうち13例は2cm以下の小腫瘤であった。2)各画像診断の検出感度を比較すると、全体では、USが68%、CTが79%、ERCPが84%、EUSが100%を示した。そして、2cm以下の小さな者に限ると、US29%、CT43%、ERCP86%、EUS95%となり、EUSは小病変の検出に優れていることが示された。3)特異性について比較すると、全体では、USが53%、CTが88%、ERCPが88%、EUSが82%を示した。そして、2cm以下の小さな者では、US69%、CT92%、ERCP100%、EUS92%であり、特異性については、ERCPやCTと同等であった。4)EUSと膵液の遺伝子診断を組み合わせたが、感度、特異性ともEUS単独の成績を凌ぐことはできなかった。しかし、、膵液中のK-ras変異の検索は、EUSにて検出された小腫瘍性病変の診断確定には有用であった。以上の成績より、現時点では、これら遺伝子診断を併用した一連の内視鏡検査の早期診断法としての意義は明らかにできなかったが、今後、1cm以下の小病変がどんどん検出されるようになれば、その真の意義が明らかになるであろう。
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