H.pyloriの胃酸分泌機構に与える影響-プロトンポンプ遺伝子発現との関連より

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08670577
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 浜松医科大学
• 研究代表者: 金子 栄蔵 浜松医科大学, 医学部, 教授 (10010414)
• キーワード: ヘリコバクター・ピロリ / 胃酸分泌 / ガストリン / プロトンポンプ

研究概要

H.pyloriと胃酸分泌の関連については一定の見解はない。そこで、H.pylori感染の胃液酸度に与える影響について検討した。H.pyloriの除菌の前後で、胃液pH、血清gastrinの変化を検討した。除菌成功群では血清gastrinは有意に低下したにも関わらず胃液pHがあ有意に低下したことから、H.pyloriは酸分泌を抑制し、その結果として血清gastrinが上昇している可能性が示唆された。そして、除菌によってH.pyloriによる酸分泌抑制が解除されると代償性に上昇していたgastrinが低下すると考えられた。さらに、H.pylori感染胃粘膜ではPPI投与終了後の胃内pHが高く持続することから、H.pylori感染は壁細胞でのプロトンポンプの合成を抑制している可能が示唆された。そこで、胃体部大彎粘膜中のプロトンポンプmRNAを定量した。H.pyloriの除菌の前後で胃体部粘膜内プロトンポンプmRNAが増加したことより、H.pyloriの酸分泌抑制の機序として壁細胞のプロトンポンプの遺伝子発現を抑制する機序の関与が示唆された。H.pyloriの壁細胞に対する抑制作用の機序として、IL-1 beta及びTNF-αの酸分泌抑制性の炎症性サイトカインの関与が考えられている。そこで、胃粘膜内IL-1 beta及びTNF-αmRNA量を測定したところ、それらは胃液のpHと有意な相関を示し、こうしたサイトカインが酸分泌抑制に関わっていると考えている。
また、H.pylori除菌前後で血清pepsinogen I/II比測定し、その変化率を除菌の成否別に検討したところ、治療前値に応じてカットオフ値を設けることによってPCR法に匹敵する高い感度・特異度を示す除菌のマーカーになることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Furuta T et al: "Percentage changes in serum pepsinogen are useful as indices of eradication of H.pylori" Amer J Gastroenterol. 92(1). 84-88 (1997)
• [文献書誌] Furuta T et al: "Quantitative study of H.pylori in gastric muws by competitive PCR using synthetic DNA fragments" J Clin Microbiol. 34(10). 2421-2425 (1996)
• [文献書誌] Furuta T et al: "H.pylori-the present status in Japan and a newer diagnostic method applying competitive PCR." Chin J Gastroenterol. Heparol. 5(1). 12-18 (1996)
• [文献書誌] 古田隆久 他: "血清ペプシノゲン・ガストリン値の変化よりみたH.pyloriの除菌判定" Prog.in Med.15(9). 240-244 (1995)
• [文献書誌] Furuta T et al: "Effect of lansoprazole with or without amoxicill in on ulcer healing relation to eradication of helicobacter pylori" J Clin Gastroenterol. 20(Suppl2). S107-S111 (1995)
• [文献書誌] 古田隆久 他: "合成DNAを用いたCompotitive PCRによる胃粘液中H.pyloriの定量" 日消会誌. 90(11). 2962 (1992)
• [文献書誌] 金子栄蔵 他: "消化器内視鏡治療" 金原出版社, 177 (1995)