研究概要 |
Tissue inhibitor of metalloproteinases(TIMPs)はマトリックス分解酵素の活性を阻害する一方で、種々の細胞に対し増殖作用を有する。平成8年度は、TIMP-1,2のヒト肝癌細胞株に対する増殖作用を検討した。本年度は、ラット肝細胞に対するTIMP-1の増殖作用と、近年発見されたTIMP-3のヒト肝癌細胞株での発現を検討した。 1.ウイスター系ラットの肝臓よりコラゲナーゼ灌流法にて肝細胞を単離し、種々の濃度(10-200ng/ml)のTIMP-1を添加の後、^3H-Thymidineの取り込みを測定した。bovine recombinant TIMP-1の添加により^3H-Thymidineの取り込みが観察され、培養液中のTIMP-1濃度が200ng/mlにおいて^3H-Thymidine取り込みに有意の上昇(p<0.05)が見られた。ヒト recombinant TIMP-1を添加したラット肝細胞では^3H-Thymidineの取り込みは見られず、ラットの実験系ではbovine recombinant TIMP-1のみが増殖作用を示すことが示された。 2.HepG2、Huh7、PLC/PRF/5を無血清培地で培養後、全RNAを抽出しRT-PCR法によりTIMP-3遺伝子を増幅、TIMP-3の発現を検討した。また、Direct sequencingにより塩基配列を検討した。いずれの細胞株も無刺激下でTIMP-3を発現しており、TNF-αを添加することによりTIMP-3の発現が増強した。 TIMPsは、肝癌細胞に発現しており、オートクリン因子として機能していると考えられる。また、TIMP-1はラット肝細胞に対する増殖作用があり、今後TIMPsの増殖作用あるいは線維化抑制作用の研究においてラット肝臓が実験モデルとして有用であることが示された。
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