染色体末端のテロメアDNAを伸長する酵素、テロメレースの活性化による細胞の不死化はがん細胞の成立、進展に不可欠な機構のひとつであることが示されている。がん組織と正常組織との移行病巣の明らかな肝細胞がんにおける、我々の研究結果からも、非がん部からがん部への病変の移行および病変間での悪性進展に伴ってテロメア長は徐々に短縮化すること、さらにテロメレース活性は肝細胞がん組織においてのみ検出されることから、テロメレースの活性化による細胞の不死化は肝細胞がんの進展過程においても不可欠な機構であるとともに、テロメレース活性の有無は肝細胞がんの悪性度および進行度などの診断における新しい指標となる可能性が示唆される。本研究では、超音波エコー下生検時の臨床例における微量の肝臓組織(21ゲージ注射針による生検材料)を対照としたテロメレース活性の検出を試み、早期診断時における肝細胞がんの診断確定の新しい指標となるかどうかについて検討を行った。採取した微量組織のうち肝細胞がんと診断された全例(14/14)において顕著なテロメレース活性が検出され、近接した組織においては弱いながらテロメレース活性(肝細胞がんの1/100あるいはそれ以下)が検出されるものも存在した。肝硬変(4例)および慢性肝炎(2例)と診断された2例において、肝細胞がんと同程度のテロメレース活性が検出された。これらの結果は、針生検試料において極めて高頻度に検出される顕著なテロメレース活性は肝細胞がんの有力な診断根拠のひとつとなり得ると考えられる。
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