研究概要 |
原発性胆汁性肝硬変(以下PBC)における肝内胆管の障害機序は不明であるが、胆管上皮細胞に対する自己免疫的機序の関与が示唆されている。本症の発症に特定のHLAにより規定される免疫学的背景が関与すること、胆管上皮に存在する抗原に反応するT細胞クローンによる免疫応答が関与していると考えられる。近年、細胞性免疫反応を司るTh1細胞と液性免疫反応を司るTh2細胞がサイトカインネットワークを形成し、両者のバランスにより生体の免疫反応が調節されていることが明らかになってきた。そこで本研究ではPBCにおける免疫異常を明らかにする目的で、PBCにおけるサイトカインネットワークの異常とHLAおよびT細胞クローンの解析を検討した。平成8年度はPBC肝組織中の各種サイトカインの発現を検討した。PBC症例の生検肝組織よりRNAを抽出し、サイトカイン(IL-2,IL-4,IL-5,IL-6,IL-12,IFN-γ)の発現をRT-PCRにより検討した。PBC肝組織ではIL-5,IL-6,IL-10,IL-12,IFN-γが高率にまた強く発現されていた。特にIL-5の発現と肝組織に浸潤していた好酸球数は有意に相関していた。またマクロファージに発現されるIL-12とTh1リンパ球によるIFN-γの発現は有意に相関していた。一方、IL-2,IL-4の発現はほとんど認められなかった。以上よりPBC肝組織においてはTh1細胞とTh2細胞の両者のサイトカインが発現されていたが、その発現に偏りがあり、本症の発症と何らかの関係があるもののと推察された。
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