研究概要 |
肝細胞癌の多段階発癌に関して検討し、特に発癌の初期過程における遺伝子異常を明らかにすることを目的とした。 1. RLGS法(Restriction Landmark Genome Scanning)により肝細胞癌18例につき癌部、非癌部でのパターンを比較検討した。癌部における遺伝子の増幅やLOH等多様な変化を反映するDNA断片を検出した。多結節性のHCCにおいては、スポットのパターンの比較から肝内転移と多発癌との識別が容易に可能であった。多発癌の各結節や、被包型HCCで多様構造を示すものでは各部位でそれぞれいくつかの異なるスポットの変化が観察された。RLGS法及びAP-PCR法で、ゲノムの不安定化を引き起こすDNAのメチル化状態の変化は肝癌の発癌初期過程において検出されており、メチル化状態の変化に起因すると予想される変化が多く観察された。メチル化状態の変化に起因するスポットの変化は、主に新たなスポットの出現、強度の増強として現れる。これらのスポットについてクローニングとRadiation hybrid PCR(RH PCR)を用いた染色体マッピングを行った。我々の解析によっても肝癌及びその前癌病変に於いて、メチル化状態の変化の存在が示された。ゲノムのメチル化状態の変化は肝癌に於いても発癌の初期過程に於いて重要な役割をになっていると予想される。p16,p15のプロモータのメチル化について検討した、小肝癌などの発癌の初期過程に於いてメチル化が認た。 2. さらにAP-PCRSSCP法によっても広範なDNA異常検索を行い、癌部特異的な変化を多く検出した。小肝癌5例中2例と進行癌の18例中3例に於いて、20Bpのprimerを用いたAP-PCR-SSCP法によって検出したDNA断片を、クローニングして染色体9qに、AMFW1417として登録した。これは新たな癌抑制遺伝子の一部である可能性を示唆している。微分表示表示法によっても新しいバンドとして確認した。小肝癌と進行癌に関して検索中である。 3. テロメア長は、慢性肝炎、肝硬変と肝の病態が進行するに伴って短縮する。肝細胞癌では、高分化型の小さいものではさらに短縮するが、ある大きさになると逆に伸長し、細胞分裂によるDNAの短縮・不安定性を凌駕して細胞が不死化する。この現象は、肝細胞癌におけるテロメアーゼ活性の高発現によるが、非癌肝硬変でも一部発現が認められ、肝硬変細胞の高癌化状態も示唆された。テロメアーゼは3つのサブユニット(TPl,TR,hTRT)から構成されているが、テロメアーゼの活性化はhTRTの出現と相関することも明らかになった。
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