研究概要 |
1.大腸癌の組織発生,発育、進展の病態を明かにする目的で,ポリ-プ型および表面型早期癌におけるKi-67からみた細胞増殖態度,apoptosis, p53蛋白・bcl-2蛋白の発現,さらにMUC-1 mucin, TGF-α蛋白の発現に関して検討し,以下の結果を得た。 1) Ki-67標識率はポリ-プ型早期癌に比べ表面型早期癌で有意に高値であった。一方,逆にapoptosisはポリ-プ型早期癌が表面型早期癌に比べ有意に高頻度で発現しており,ポリ-プ型早期癌と表面型早期癌は増殖態度が異なる事が明らかになった。なお,p53蛋白・bcl-2蛋白の発現と早期癌肉眼型との間には関連はなく,組織発生(de novoあるいはadenoma-carcinoma-sequence)別でも各物質の発現に差はなかった。 2)癌関連抗原の1つであるMUC-1 mucinの発現に関して検討したところ,癌で極めて高率に発現し,腺腫ではほとんど発現しなかった。このことからMUC-1 mucinは腺腫の癌化に何らかの関与をしていると考えられ,また大腸癌と腺腫の鑑別指標の1つになりうる可能性が示唆された。 3) Ki-67標識率,TGF-α発現の検討から,高周波電流で刺激を受けた内視鏡切除遺残大腸腫瘍はより高い増殖能を獲得する事が明らかになった。この結果に関しては,ヌードマウス移植腫瘍を用いてさらに基礎的な検討が進行中である。 2.大腸癌の浸潤・転移機序に関する検討では,sm癌・進行癌ともに浸潤先進部におけるMUG-1 mucin発現が転移能・予後に密接な関連がある事が明らかになった。 3.以上の結果に関して腫瘍内組織多様性を考慮するため,臨床材料の収集と平行してin situ hybridazationによる検討を行う予定である。
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