研究概要 |
本年度の研究成果は、現在使用している線維化抑制剤(Prolyl4-hydroxylase inhibitor,HOE 077)が、肝細胞壊死-再生を繰り返し肝線維化(肝硬変)へ至るコリン欠乏アミノ酸置換(CDAA)食モデルにおけるメカニズムを4カ月飼育した時点で検討報告した(Hepatology,1996)。すなわち、Prolyl4-hydroxylase inhibitorは単にプロテアーゼ阻害剤としてプロリンの水酸化を阻害するだけでなく、肝組織の線維化の中心的役割を担う伊東細胞でのコラーゲン合成をmRNAレベルで抑制することが判明した。また、肝細胞壊死を伴わない肝線維化モデル(ラットにブタ血清を投与した肝線維化モデル)においても、伊東細胞を抑制することで線維化を抑制する事を明らかにした(J Hepatol,in press)。すなわち、肝組織中のtypeI,IIIコラーゲンmRNAの抑制とハイドロキシプロリン量の低下、電顕における伊東細胞の活性化抑制(ビタミンA減少の抑制、RERの増加抑制など)により線維化抑制が確認できた。さらに、コリン欠乏アミノ酸置換(CDAA)食モデルにおいてProlyl4-hydroxylase inhibitorを1年間投与した結果、Prolyl4-hydroxylase inhibitor非投与群では90%のラットに肝細胞癌の発生を認めたのに対し、Prolyl4-hydroxylase inhibitor投与群では50%の発癌率に抑制された。 来年度は、培養系において肝細胞癌に与える伊東細胞の影響と、ブタ血清を投与し肝細胞壊死-再生を伴わないで線維肝をあらかじめ作成後、コリン欠乏アミノ酸置換(CDAA)食モデルにおける前癌性病変の発現に与える影響を検討する。
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