研究概要 |
本年度の研究成果として、現在肝障害患者に使用されている漢方薬(Sho-saiko-to,TJ-9)が、肝細胞壊死-再生を繰り返し肝線維化(肝硬変)へ至るコリン欠乏アミノ酸置換(CDAA)食モデルにおいて抗線維化作用を有することを検討報告した(J Hepatol 1998;28:298-306)。TJ-9は、肝組織の線維化の中心的役割を担う伊東(星)細胞でのコラーゲン合成をmRNAレベルで抑制し、ひいては前癌性病変である酵素変異巣の減少をもたらすことを明らかにした。また、インターフェロンガンマーは肝細胞壊死を伴わない肝線維化モデル(ラットにブタ血清を投与した肝線維化モデル)において、肝組織中でのTGF-β1の発現を抑制することなく、直接伊東細胞を抑制することで線維化を抑制する事を明らかにした(J Hepatol,in press)。これらのことは、ヒトの慢性肝炎ないし肝硬変にこれらの薬剤で肝発癌が抑制されたという報告と一致しており、伊東細胞の活性化抑制による線維化の抑制が肝発癌の抑制につながる可能性を示唆するものと考えられる。来年度は、さらに肝発癌が線維化と関連があるのか、伊東細胞の活性化そのものと関連があるのかを検討し、培養系において肝細胞癌に与える伊東細胞の影響も検討する。
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