当該研究期間の研究成果としては、肝細胞壊死ー再生(増殖)ー線雑化(伊東細胞の活性化)ー肝発癌の経緯をとるコリン欠乏アミノ酸置換食モデルにおいて、コラーゲン合成のkey enzymeであるprolyl 4-hydroxylase阻害剤を加えての4カ月間の実験では、この阻害剤が伊東細胞の非活性化により線維化の抑制と肝硬変に発生する前癌性病変を抑制することが判明した。またコリン欠乏アミノ酸置換食を用いた長期(1年)の実験では、伊東細胞の非活性化により線維化を抑制すると肝発癌率が低下することも見いだした。さらに、ラットにブタ血清を投与すると、TGF-β1が誘導され伊東細胞の活性化により肝細胞壊死を伴わずに肝線維化を惹起させることができた。このブタ血清をあらかじめラットに投与し、伊東細胞の活性化と線維化が存在する状態で、コリン欠乏アミノ酸置換食により肝細胞壊死を引き起こしてやると、ブタ血清+コリン欠乏アミノ酸置換食群ではコリン欠乏アミノ酸置換食単独群に比べ、正常肝細胞増殖抑制作用を有するTGF-β1が増加しているものの前癌性病変の数、大きさとも増加していることが判明した。すなわち、伊東細胞がより活性化した状態ではより多くの前癌性病変が出現することが明らかになった。また、前癌性病変はTGF-β1の増殖抑制作用から逸脱していることも明らかになった。さらに、癌細胞と活性化伊東細胞の混合培養では、伊東細胞の活性化が抑制される傾向が見られたが、今後この分野では更なる検討が必要である。
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