研究概要 |
1.肝硬変や慢性肝疾患患者でみられる血小板減少におよぼすthrombopoietin(TPO)の関与を慢性肝障害モデルを作成して検討した。 慢性肝障害モデルは8週令のWistar系雄性ラットに四塩化炭素:オリーブ油(1:1)混合溶液を0.5ml/kgを2〜3回/週、20週間経口投与して作成した。投与しない群を対照とした。 結果 1)四塩化炭素20週投与群では肉眼的に肝臓表面に結節状の凹凸を示し、HE染色では小葉構造の改築および門脈域の線維化がみられ、肝硬変の像であった。 2)末梢血血小板数は対照群109.7万/mm^3に対して、四塩化炭素投与群では70.4万/mm^3と有意に(p<0.01, t-test)血小板減少が見られた。 3)血液生化学検査 (1)血清アルブミンは対照群3.90g/dlに対して、四塩化炭素投与群では3.26g/dlと有意に(p<0.02, t-test)低下していた。 (2)総蛋白、GPT、コリンエステラーゼは両群で有意差はなかった。 3)肝臓、脾臓、腎臓、肺臓の組織よりRNAを抽出し、RT-PCRを行ない、TPO-mRNA量を測定した。 (1)肝臓では両群でTPO-mRNAの発現がみられたが、四塩化炭素投与群では対照群に比較して、約50%低下していた。 (2)対照群、四塩化炭素投与群共に、脾、腎、肺でのTPO-mRNAの発現はなかった。 結論 肝硬変では正常肝に比べTPO-mRNA発現が低下し、その発現量の低下が血小板減少の原因の一つである可能性が示唆された。
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