研究概要 |
本研究では,補体制御機構として重要な細胞膜結合型補体制御因子の消化管における意義を,ラット,ヒト,モルモット胃粘膜を用いて検討を進めている.ラットでは,補体制御因子5I2抗原をモノクローナル抗体を用いた免疫組織科学で胃粘膜上皮,胃粘膜血管内皮に強い局在を認め,本因子の存在が正常胃粘膜の維持に重要であるとの示唆を得た.ヒト胃粘膜ではdecay acceleratimg factor (DAF), membrene cofactor protein (MCP), homologous restriction factor 20 (HRF20)を検討したところ,特にDAFの発現が炎症(好中球・リンパ球浸潤)の程度と統計学的に有意に相関し,(好中球では有意確率p<0.001,順位相関係数rs=0.516で,リンパ球では有意確率p<0.01,順位相関係数rs=0.482),ヒト胃炎の病態にDAFが重要な役割を演じることを見いだした.モルモットは現時点で唯一実験的にDAFの発現を遺伝子,蛋白レベルで検討できる動物種であるが,胃虚血ストレスを負荷した後にDAFの発現が増加するどうかを中心に検討を進めている.その結果,モルモット胃粘膜DAFは虚血ストレス後約24時間で発現が増加し,約3日間発現が持続することが判明し,ヒトにおける検討と矛盾しない結果であった.さらに,ラット左胃動脈を30分クランプ解放した際の胃粘膜上皮障害における補体の役割を検討したが,補体を枯渇化するCVFの前処置も,補体活性の阻害剤であるK-76 COOHのいずれも虚血後に起こる粘膜障害を抑制した.これらの成績から,特に虚血性胃粘膜障害における補体-補体制御因子系の重要性が明らかになりつつある.
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