1)各種活性酸素による胃粘膜培養細胞の増殖に対する影響 ラット胃粘膜培養細胞RGM-1、ヒト胃癌細胞株MKN-45、MKN28を用いて、各種活性酸素の細胞増殖に及ぼす影響を検討した。各種活性酸素(過酸化水素、次亜鉛素酸)、一酸化窒素、塩化アンモニア、モノクロラミンの増殖抑制作用を、細胞壊死非惹起低濃度で検討したが、塩化アンモニアには抑制作用はなく、抑制作用は過酸化水素>モノクロラミン>次亜塩素酸>一酸化窒素の順に強かった。FACSによる細胞周期の検討では、細胞周期はS期後期からG2/M期で停止していた。モノクロラミンは活性酸素(次亜塩素酸)とHelicobacter pyloriの産生するアンモニアとの作用により産生されることが知られており、今回の結果はH. pyloriの胃粘膜障害性に新たな知見を与えるものと考えられた。 2)モノクロラミンによる胃粘膜細胞アポトーシス誘導作用 モノクロラミンによるアポトーシス誘導について検討したが、濃度依存性にRGM-1細胞の細胞核断片化、核凝集、FACS解析によるsub-G1ピークの増加、TUNEL陽性細胞の出現を認めた。H. pylori感染に胃粘膜萎縮、胃発癌が生じる可能性が高いことが知られているが、本機序を与えるうえでモノクロラミンによるアポトーシス誘導は極めて興味深い知見と考えられる。 以上の結果は、1996年アメリカ消化器病学会、日本消化器病学会、日本炎症学会で発表した。
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