胃粘膜に棲息するグラム陰性桿菌ヘリコバクター・ピロリ感染と胃粘膜細胞増殖との関与を検討するために、そのメディエーターとして炎症細胞よりされる活性酸素に注目した。各種活性酸素やその代謝産物の胃粘膜培養細胞(ラット正常胃粘膜培養細胞RGM-1)増殖に及ぼす影響を検討し、その中から活性酸素である次亜鉛素酸とピロリ菌の生成するアンモニアとにより生じるモノクロラミンに強い細胞増殖抑制作用ならびにアポトーシス誘導作用があることを見いだした。モノクロラミンは濃度依存性にRGM-1細胞の増殖を抑制し、その増殖抑制はモノクロラミン消去剤であるメチオニンにより解除された。増殖抑制の機序の解明のために、細胞周期ならびにヘキスト33342とプロピジウムイオダイドによる細胞形態観察を行い、モノクロラミン濃度依存性に細胞周期でのG2/M停止ならびにアポトーシスが誘導されることを明らかにした。以上の結果は、ヘリコバクター・ピロリ感染により引き起こされる胃粘膜炎症に伴う胃粘膜萎縮に、モノクロラミンによる細胞レベルでの増殖抑制、アポトーシス誘導が関与する可能性があり、今後さらなる検討が必要であると考える。
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