研究概要 |
コレシストキニン(CCK)と腺房細胞増殖ならびに腺房細胞のアポトーシスとの関連性を解析するとともに腺房細胞のcell cycleについて検討した。実験系としては、以下の2つを選択した。(1)内因性CCK刺激:Wistar系雄性ラットにcamostat50mg/kg体重を単回経口投与し、12,24,48,72,120時間後に屠殺した。(2)急性膵炎後膵再生:Wistar系雄性ラットにL-argininemonohydrochloride(Arg)4.5g/kg体重を単回腹腔内投与し、5,7,9,11,14日目に屠殺し、併せてCCK受容体拮抗剤CR1505 50mg/kg体重を6日目から1日2回皮下投与した群と比較した。いずれの実験系においても屠殺1時間前にBrdU20mg/kg体重を静脈投与した。研究成績:(1)camostat投与後30分で血漿CCKは基礎値の約40倍に上昇し、以後漸減したが、腺房細胞のBrdU陽性率と膵DNA含量は1日目に有意なピークを示し、腺房細胞のTUNEL陽性率は1日目以降に漸増する経過をとった。(2)CR1505を急性膵炎回復期初期に投与開始すると膵再生が抑制されたが、この際、腺房細胞の値を示すものの統計学的に有意ではなかった。ここに、高CCK刺激で誕生した腺房細胞が後続するCCK刺激がなければアポトーシスによる細胞死に陥るという仮説が成り立つ。(1)の実験系において、腺房細胞増殖の盛んなcamostat投与12〜36時間にかけて覚醒ラットにBrdUを持続静注し、5日目に屠殺した結果、腺房細胞のBrdU標識率は約12%と高率であったこと、(2)の実験系において、血漿CCKと腺房細胞のBrdU標識率との間には有意な正の相関(r=0.555,p<0.001)が得られたが、血漿CCKと腺房細胞のアポトーシスとの間には有意な負の相関がなかったこと、より上述の仮説は必ずしも成立しないと考察された。他方、線房細胞は終末分化細胞なのかG_0期細胞なのかという、腺房細胞のcell cycleに関する検討結果について以下に記述する。Arg誘発ラット急性膵炎の進展期(12時間後)に膵腺房細胞のPCNA陽性率が急激に上昇し、この際、腺房細胞のBrdU標識率は上昇をみなかった。PCNAはG_1後期からS期にかけて増加する核蛋白であり、急性膵炎進展期における腺房細胞は、一旦G_1期に入り、その後死滅する可能性があるといえた。Western blottingでは、急性膵炎進展期における腺房細胞のPCNAはpolymericであるが、cyclinD_1などのG_1Cyclinとの複合体として増加していることが想定された。
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