研究概要 |
IFNの発癌抑制作用や肝癌への直接作用について検討した。増殖因子の一種であるbasic fibroblast growth factor(bFGF)は、癌の増殖及び浸潤に関与し、interferon(IFN)によりその発現が抑制されることが腎癌細胞で報告されている。今回、我々は肝癌細胞を用いて、bFGFやIFNが細胞増殖や浸潤能に及ぼす影響について検討した。ELISA法により、4種の肝癌細胞(PLC/PRF/5,HLF,HepG2,Huh-7)において、bFGFは、HLF>PLC/PRF/5>Huh-7の順に強い発現を示し、HepG2細胞では殆ど発現を認めなかった。この発現量の大小はmRNAレベルにおいても同様であった。肝癌細胞に、IFNを添加し培養すると、PLC/PRF/5細胞では、IFN-αおよびIFN-βより細胞増殖が、濃度依存性に顕著に抑制された。Huh-7細胞では増殖抑制効果が弱く、HepG2,HLF細胞においては、全く認められなかった。IFN-γは、いずれの細胞においても、増殖抑制効果を示さなかった。細胞内bFGFの発現量は、PLC/PRF/5細胞において、IFN-αおよびIFN-βより、濃度依存性に低下したが、IFN-γでは、bFGFの発現は低下しなかった。HLF、Huh-7細胞においては、bFGFは低下を認めず、細胞増殖抑制作用とbFGF発現抑制効果に連動性を認めた。血清飢餓状態においた肝癌細胞では、bFGF低発現株のHepG2細胞において、2〜2.5倍の細胞増殖促進効果を認めた。また、bFGFの中和抗体を培養系に添加すると、bFGF高発現株のHLF細胞では細胞増殖を、10〜15%程度、抑制した。以上から、IFN-αおよびIFN-βによる増殖抑制効果は、IFNが内因性bFGFの増殖作用を抑制することによって発現する可能性が示唆された。 In vitroの基底膜浸潤系における検討では、IFNは肝癌細胞の浸潤を、軽度低下させた。しかし、bFGFは、浸潤を促進する効果が認められなかった。 以上より、肝癌におけるbFGFの発現は増殖能と関連性が強く、浸潤能への関与は低いものと考えられた。また、IFNは、一部の肝癌細胞において、増殖抑制効果を認め、その作用機序の一つとしてbFGFを介した自律性増殖を抑制することが示唆された。
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