研究課題/領域番号 |
08670611
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
荒川 哲男 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (60145779)
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研究分担者 |
藤原 靖弘 大阪市立大学, 医学部, 助手 (40285292)
樋口 和秀 大阪市立大学, 医学部, 講師 (20218697)
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キーワード | Halicobacter pylori / サイトトキシン / 胃粘膜 / 炎症性サイトカイン / インターロイキン1β / 細胞増殖 / 上皮成長因子 / 好中球 |
研究概要 |
ヒトにおいてHelicobacter pylori感染は慢性胃炎、消化性潰瘍、胃癌、ある種の胃悪性リンパ腫との密接な関連が報告されている。しかしながらこれらの疾患との病態生理については未だ不明な点が多い。本研究はH.pyloriによる胃粘膜傷害発生の機序をH.pyloriが産生するサイトトキシンの面より解明したものである。その結果、サイトトキシン産生H.pylori株培養上清液をヒト胃粘膜培養細胞に添加することにより胃粘膜細胞の増殖を抑制し、その作用機序として細胞増殖を刺激する因子の一つである上皮成長因子(EGF)が細胞表面のEGFレセプターに結合することを抑制することが判明した。またサイトトキシン産生H.pylori株の水抽出液を用いた検討では、ヒト末梢血単離単球からの炎症性サイトカインであるinterleukin-1βやtumor necrosis factor-αの産生分泌を刺激するとともに、これらのサイトカインのmRNAの発現も有意に刺激した。またこれらの作用は胃粘膜防御機構の中心的役割であるプロスタグランジンの投与により抑制されることが判明した。 さらに、これらの炎症性サイトカインが動物モデルにおいて接着分子の発現増加、好中球浸潤刺激により胃潰瘍再発を惹起させること、また同再発潰瘍モデルにおいて胃粘膜中のMCP-1の発現が増加すること、in vitroの実験系で好中球浸潤、遊走を刺激し上皮間に遊走してくる際に上皮バリア機構の破綻を導くことも証明した。以上のごとく本研究はH.pylori感染による慢性胃炎、消化性潰瘍の病因機序の解明に大きく貢献したものと確信する。
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