研究概要 |
ヒト肝細胞がん(HCC)は早期発見が困難な疾患であり、現在のところ腫瘍動脈塞栓術(TAE)あるいはアルコール局所注入により延命を計る以外有効な治療法が確立されていない。そのため新たな遺伝子治療法の確立が急務といえる。本研究計画において我々が開発を目指す遺伝子治療法は、臨床の場でHCC患者に対してルーチンに行われているTAE療法の際に肝動脈より自殺遺伝子発現ウイルスを投与し、肝癌細胞を特異的に殺傷せしめることを目指すものである。 細胞株を用いた実験。アルファヘトプロテイン(AFP)遺伝子プロモーター、シトシンデアミナーゼ(CD)遺伝子cDNA、及びSV40由来のスプライシング、ポリアデニレイションシグナルとの組み合わせを、genomicRNAと反対方向に挿入したレトロウィルスDNAを作成した。このレトロウィルスにおいては、ネオマイシン耐性遺伝子がウィルスのLTRによって、またCD遺伝子はAFP発現ユニットによってそれぞれ発現制御されることになる。この組み替えレトロウィルス、及びコントロールウィルスのDNAをパッケージング細胞株に導入し、それぞれのウィルス粒子を得た。次に、これらウィルスを、AFP産生HCC細胞株であるHep-G2,HuH-7、またAFP非産生細胞株であるHGC-2(ヒト絨毛がん細胞株)、MCF-7(ヒト乳がん細胞株),3T3(マウス繊維芽細胞株)に感染させ、レトロウィルスの安定導入株を得た。これら安定導入株を5-fluorocytosine(5-FCyt)存在下と非存在下で培養し、AFP産生細胞株に5-FCytを投与した場合のみに細胞死が誘導されることを確認された。
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