研究概要 |
平成9年度の研究はPBCにおける胆管破壊機構の免疫反応機構の解明を目的に細胞間接着分子としてICAM-1,LFA-1に着目し、PBCおよび対照群としての胆石症患者生検肝およびラット肝組織における表出の相違を観察した。ICAM-1,LFA-1の局在の観察には酵素抗体間接法を用い、胆管周囲のみならず肝微小循環系、特に活性化リンパ球の門脈域間質への流出部位と考えられる門脈細枝周辺に注目して検討した。さらに、PBC患者末梢血中のsoluble(s)-ICAM-1値をELISA法によって測定し、その起源と臨床的意義を究明した。 1.免疫組織化学的検討 PBC患者(Scheuer stage I,II)6例および対照群として無黄疸胆石症例4例について、開腹手術下あるいは腹腔鏡下楔状肝生検をおこなって肝組織を得た。細切後PLP固定液中で固定し、OCT compound(Miles)にて包埋後、液体窒素で凍結し、4〜6μmの連続切片をcryostatにて作製した。酵素抗体間接法に従い、一次抗体としてマウス抗ヒトICAM-1-1,LFA-1(Dako Japan)モノクローナル抗体を反応させ、二次抗体としてHRP標識ヤギ抗マウスIgGF(ab')2 抗体(Cappel)を反応させ、DAB溶液にて発色させ、光学顕微鏡下で観察した。胆石症の肝組織においてはICAM-1の表出は胆管上皮細胞上には認められなかった。一方PBCの肝組織においてはCNSDCを示す中等大胆管の上皮細胞形質膜上に異所性に陽性反応を示した。LFA-1については胆石症の肝組織においては門脈域内にリンパ球の浸潤は認められず、浸潤が軽度にある場合もLFA-1の反応は陰性であった。一方、PBCの門脈域に浸潤するリンパ球の大部分はLFA-1陽性を示し、中等大胆管では全周にわたってLFA-1陽性リンパ球を認めた。さらに一部のLFA-1陽性リンパ球が胆管上皮細胞の基底膜側に接着し、胆管上皮細胞間へ侵入、接着している像が捉えられた。 2.末梢血中のsoluble(s)-ICAM-1値の測定 PBC患者22例および、対照群として健常者5例について早朝空腹時に末梢血を採取し、血清中soluble ICAM-1の測定をおこなった。測定はELISA法により、ICAM-1 TEST KIT(T cell diagnostics,UK)を使用した。PBC患者血清においては全例で健常群にたいしてs-ICAM-1値の有意な上昇を認めた。PBC群の中ではstage I,IIに対してstage III,IVで有意に高値を示した。
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