研究概要 |
1.継代ヒト培養細胞株PtK_2から得られたcytokeratinのsubclass CK1 (52KD)に対するモノクローン抗体を作製し、この抗体を用いた酵素抗体間接法によってCK1の発現を原発性胆汁性肝硬変(PBC)および対照として胆石症患者の腹腔鏡下楔状生検肝組織において検討した。CK1は対照では肝内胆管系に発現はみられなかったが、AMA陽性、陰性PBCにおいて、特にchronic nonsuppuretive destructive cholangitis (CNSDC)を示す隔壁ないしは小葉間胆管の上皮細胞内に異所性に発現し、CK1が胆管上皮細胞を場として起こる自己免疫反応の"epitope"になっている可能性が示された。 2.細胞間接着分子であるICAM-1とそのリガンドであるLFA-1の表出をPBCおよび対照生検肝組織において同様に観察した。ICAM-1は対照では類洞内皮細胞のみに表出し、AMA陽性、陰性PBCではCNSDCを示す小葉間ないしは隔壁胆管の上皮細胞形質膜上に異所性に表出し、特に浸潤リンパ球が多数集族している基底側の胆管上皮細胞形質膜上に強いICAM-1の表出が認められた。LFA-1はCNSDCを示す傷害胆管周囲を取り巻く浸潤リンパ球上に強く表出し、一部のLFA-1陽性リンパ球が胆管基底部で胆管上皮細胞に接着している像が観察された。免疫組織化学的に識別されたCD4、CD8浸潤リンパ球の一部がいずれも傷害胆管上皮細胞に直接接着していた。さらに、CNSDCを示す胆管上皮細胞上にはHLA-A, B, Cの発現増強とHLA-DRの顕著な異所性発現を認めた。以上の所見から、HLA抗原の表出と増強により活性化されたCD4リンパ球(class II拘束性)とCD8リンパ球(class I拘束性)の両者が標的胆管上皮細胞に対して傷害性に作用し、終局的CD8陽性の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)がリンパ球表面に発現したLFA-1と胆管上皮細胞形質膜上に発現したICAM-1の接合を介して胆管上皮細胞の破壊を惹起すると想定された。 3.PBC患者血清中の抗CK-1抗体価をsandwich inhibition ELISA法で、ICAM-1の発現を反映すると考えられるsoluble (s)-ICAM-1値はELISA法で測定し、これらがPBCに対するUDCA (ursodeoxycholic acid:600mg/日)療法によってどのように影響されるかを検討した。抗CK1抗体価およびs-ICAM-1値はUDCA投与後1ヶ月で有意に低下し、いずれも2年後まで持続した。長期UDCA療法による血清抗CK1抗体価と血清s-ICAM-1値の低下は自己免疫性胆管破壊の是正を表わすと推定された、
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