間葉系細胞から発現される成長因子epimorphinの肝再生にもたらす影響を解決するため、マウス及びラットを用いて以下の実験を行った。 先ずマウスに70%部分肝切除を施し、肝再生過程におけるepimorphinの発現動態を蛍光抗体法を用いて観察した。その結果、他の増殖因子の発現が肝切除24時間以内に上昇するのに比し、epimorphinの発現は細胞増殖期をすぎた切除後5日目より亢進し、肝重量が完全に戻る14日目においても観察された。次にラット肝細胞を既報のcollagenase灌流法を用いて分離し、epimorphinをコートした培養皿上に散布、37℃にて培養を行い、形態変化の観察を経時的に位相差顕微鏡下で行った。その結果、なにもコートしていない通常の培養では肝細胞は単層のシート状を保っているが、epimorphinコート上では細胞塊(spheroid)を形成していた。このspheroid内部を電子顕微鏡で観察すると、microviriを伴う毛細胆管及びタイトジャンクションの構造が見られた。更に肝臓特有の機能であるアルブミンの産生をELISA法にて測定すると、非コート単層シートに比べspheroidは高い合成能を保持していた。これらの結果より、epimorphinは肝再生時において、細胞分裂後の増殖した細胞に働き、分化を誘導して組織の正常な再構築に関わっているものと示唆された。今後は肝炎、肝硬変、肝癌に於ける動態を観察し、臨床的意義を明らかにしていく予定である。
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