1.肝再生時に上皮の分化誘導を司る因子の一つであるepimorphinの加齢による発現変動を、マウスを用いて検討した。マウス(7日齢、11週齢、18カ月齢)の肝臓におけるepimorphinの蛋白発現は免疫組織染色法により、またmRNAはRT-PCR法により観察を行った。その結果epimorphinは胎生期から出生直後にmRNAの発現が亢進し、その後恒常的に蛋白が産生されていることが分かり、成長後の肝細胞分化機能維持にもepimorphinが働いていることが示唆された。 2.ヒトにおけるepimorphinと肝疾患の関わりを調べるため、ヒト手術検体より得られた肝組織片を用い、光学顕微鏡および電子顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡による詳細な観察を行うとともに、epimorphin mRNA発現量も同時に調べた。epimorphin蛋白は、成人ヒト正常肝においてもマウスと同様に小葉内類洞に染色され、伊東細胞より産生されていることが分かった。また硬変肝においては小葉内以外にも再生結節の線維部にepimorphin蛋白の集積が見られたにもかかわらず、mRNAの発現量は正常肝と比べて有意な差はなかった。以前に行ったマウス四塩化炭素急性肝障害モデルにおいて炎症直後にepimorphinの産生が一時的に上昇する知見を得ているが、これらの結果からヒトにおいてもウィルス感染などによる肝炎症時に産生が亢進されたepimorphinは、肝細胞壊死部の再生に寄与している可能性が示唆された。さらに炎症の繰り返しにより、活性化された伊東細胞からepimorphinと同時に作られるcollagenなどの細胞外マトリクス中に蓄積されるため、線維上に強く観察されるものと推測された。
|