研究概要 |
B型劇症肝炎、重症急性肝炎、急性肝炎患者型16例の患者の血清から、HBVを採取し、全塩基配列を解析した。その結果、劇症肝炎患者すべてにcore promotorの複数の点突然変異を見いだした。急性肝炎では、ほとんど野生型であり、重症急性肝炎では、劇症肝炎と急性肝炎の中間であった。このことから、core promotorの変異と肝炎の重症度との相関が考えられた。しかし、劇症肝炎患者に共通の変異は認められなかったため、いくつかの変異の組み合わせにより、肝炎を重症化させるような変化が起こるものと思われた。そこで、劇症肝炎患者全例のcore promotor領域をPCRにより増幅し、CATベクターに挿入し、promotor活性の測定を試みた。その結果、劇症肝炎由来のcore promotorの塩基配列は、重症肝炎、急性肝炎と比べ、高いCAT活性を示した。次に、劇症肝炎患者由来のHBVの全塩基配列をPCR法により互いに重複する3個のfragmentとして増幅した。その際重複する部分には、ユニークな制限酵素の切断部位を含むようにプライマーをデザインした。増幅したPCR産物を各々のfragmentをligateできるよう適当な制限酵素で切断した後に、ligationを行い、ベクターに挿入した。さらに、pregenome RNAの全長を含むようにDR1,DR2を含む領域をHBVの全長に付加した。この配列は、HBVの全長をtandemにつないだconstractと同様にin vitroでウイルスの複製を調べることができる。この遺伝子を培養肝癌細胞にtransfectし、その複性能を野生型のウイルスと比較したところ、高い複製力を示した。この結果から、core promotor領域の遺伝子変化が、ウイルスの複製亢進の要因となり、高い複製力が、肝障害の重症化と関連していることが推測された。
|