ラット肝化学発癌モデルにおけるグルタチオンS-トランスフェラーゼ(glutathione S-transferase : GST)-πの発現機序を明らかにする目的で、今年度はWistar系ラットに発癌剤diethylnitrosamine(DEN)を投与し、肝発癌を認めるまでの期間、2週毎に犠牲死させ、肝を摘出、標本を免疫組織化学とin situハイブリダイゼーションによって検討した。HE染色では6週目から過形成性結節が生じ、10週目癌結節が現れ、14週目すべてのラットに肝癌が生じた。免疫染色ではGST-πは過形成性結節で強陽性で、発癌の進展とともに減弱していく傾向が認められた。一方in situハイブリダイゼーションでは、過形成性結節内の肝細胞に明らかなmRNAの発現を認め、10週目以降の癌結節においてもmRNAの発現がみられたが、分化度の高い癌細胞では過形成性結節の肝細胞にみられたのと同程度に認めたのに対し、未分化な癌細胞ではその発現は弱かった。引き続き、同じ発癌モデルでP-糖蛋白(multidrug-resistance : MDR-1遺伝子産物)の消長を免疫組織化学とin situハイブリダイゼーションにて検討中であり、上記GST-πの所見と対比する予定である。さらに次年度は化学発癌の過程でラットにcysplatin、adriamycinなど各種抗癌剤を投与し、または発癌剤投与前にこれら抗癌剤を作用させ、それぞれの群でGST-πとP-糖蛋白の消長を比較検討することを計画している。
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