研究概要 |
平成8年度の研究実績:沖縄県平良市(宮古島)の平成8年度の健康診断者2726名のうち、血中HBs抗原陽性者は220例(8.1%)に存在した。このHBs抗原陽性者のうち血中デルタ抗体陽性は、8例(3.6%)に認められた。現在複数のprimer setを作製し、このデルタ抗体陽性者の血清よりNested RT PCR法を用いてデルタ肝炎ウイルス(HDV)のfragmentを増幅している。この結果では、HDVのautocatalytic cleavage siteよりcorresponding site付近に設定したprimer set(137bp)が最も検出率が高かった。 また県立宮古病院におけるB型肝疾患における血中デルタ抗体陽性率の検索を行った。この結果では、血中HBe抗体陽性の無症候性キャリアでは13.2%,慢性肝炎では63.6%,肝硬変症66.6%,肝細胞癌57.1%に血中デルタ抗体が陽性であった。血中HBe抗原陽性例からは検出されなかった。これらの症例のうち、PCR産物より塩基配列を解析しえた症例について、すでに報告されている日本株と比較してみると、アミノ酸の変異、あるいは欠失が認められ、日本本土のHDV株との差違が認められた。 このように、B型慢性肝疾患における高い検出率と肝硬変症まで進展していくことが、宮古病院におけるHDV感染症の特徴であった。 宮古島におけるHDV感染症の集積と、日本本土とは異なったHDV変異株の存在との関係についてはさらに検索が必要であるが、閉鎖性の高い離島社会の特徴が、HDV変異株を生じさせ、この変異がHDVの病原性を変化させていることが推定された。 平成9年度の研究計画:住民検診にて検出されたデルタ抗体陽性者より、できるだけ多数の症例のsequenceを行いアミノ酸配列の検索を行う。また、劇症肝炎例、慢性肝炎例、肝硬変症例、肝細胞癌例についても、さらに多数例のアミノ酸配列の解析を行い、肝炎の進展および病態と、HDVの関与について検索する予定である。
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