特発性間質性肺炎患者(IIP)の血中に存在するひとII型肺胞上皮細胞に対する自己抗体を検出するため、29例のIIP患者を対象として、その陽性率を検討した。さらに、本抗体の陽性患者と陰性患者との間で臨床所見に差があるかどうかについて検討した。IIP患者からヘパリン採血を行い、アンフィニティー・クロマトグラフィーでIgG分画を抽出した。一方で、ヒトII型肺胞上皮細胞由来のA549細胞を培養し、プレパラートを作成、冷アセトンで固定した。プロテインA、正常ヒト血清で前処理後、先に精製しておいた患者IgGを一次抗体として免疫染色を行った。アルカリフォスファターゼ化プロテインAを二次抗体として反応させ、ベクターレッドで発色した。その結果29例中10例のIIP患者に陽性所見が得られた。背景因子の比較では、抗体陽性例で血中IgG値とIgE値が高く、気管支肺胞洗浄液中の好酸球数が少なかった。年齢、性別、呼吸機能検査所見、他の血液学的検査所見には差がなかった。肺組織における免疫染色では、共焦点レーザー顕微鏡による観察において、本抗体がII型肺胞上皮細胞の細胞質に存在することが明らかになった。次いで、A549細胞を細胞質分画とその他の分画に分離した。細胞質分画の蛋白室と抗体陽性IIP患者の精製IgGとを用いてドット・ブロッティングを行ったところ、陽性所見が得られたため、本抗体がII型肺胞上皮細胞の細胞質に存在することが確認され、免疫組織学的検討の結果と一致した。これらの結果より、約1/3の患者の血中にII型肺胞上皮細胞の細胞質に対する自己抗体が存在し、IIP患者における抗体陽性者と陰性者との間には肺の炎症機転に何らかの違いがあると推察された。
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