ヒト気道においてIgEが興奮性神経機能亢進をきたす機序の研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08670644
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 一ノ瀬 正和 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (80223105)
• キーワード: 喘息 / アレルギー / IgE / コリン作動性神経 / 気道平滑筋 / アセチルコリン / オートレセプター / 免疫グロブリン

研究概要

ヒト気道においてIgEが、収縮性神経で最も重要なコリン作動性神経機能亢進をきたすか否かにつて、肺癌手術で得られたヒト肺を用い以下のプロトコールにより実験を行った。
1.気管支と免疫グロブリンとのincubation。
IgE (human IgE kappa myeloma protein) 2μg/ml, IgG1 (human kappa) 20μg/mlで2時間incubationする。IgEに対するコントロールとしては、不活性化IgE(熱処理)を用いる。
2.コリン作動性神経電気刺激による気道平滑筋収縮能の検討。
上記の気管支リングを電気的に刺激し、平滑筋の収縮能を等尺性張力にて評価する。
3.コリン作動性神経からのアセチルコリン放出量の測定。
上記1の方法で処理した気管支リングを電気刺激し小型bath内に放出されたアセチルコリン量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定する。bath内に予めコリンエスデラーゼ阻害剤を入れアセチルコリンの分解を防止する。
以上の実験から以下の結果を得た。
1.IgE incubation群ではコリン作動性神経電気刺激による気道平滑筋収縮能がコントロール及びIgG1 incubation群に比べ有意な亢進を示した。
2.コリン作動性神経からのアセチルコリン放出量も、コントロール及びIgG1 incubation群に比べIgE incubation群で有意に増加した。
3.ムスカリンM2受容体拮抗剤は、コントロール群では電気的にによる平滑筋の収縮能を増強したが、IgE incubation群ではこの増強効果は消失した。
これら本年度の実験結果から、IgEがヒト気道平滑筋でコリン作動性神経による収縮反応を増強することが明らかとなった。さらに、その機序としてオートレセプター機能不全によるアセチルコリン過放出が関与していることが考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Ichinose M: "A neurokinin 1-receptor antagonist improves exercise-induced airway narrowing in asthmatic patients." Am. J. Respir. Crit. Care Med.153. 936-941 (1996)
• [文献書誌] Tomaki M: "Angiotensin converting enzyme (ACE) inhibitor-induced cough and substance P." Thorax. 51. 199-201 (1996)
• [文献書誌] Ishikawa J: "Involvement of endogenous tachykinins in LTD4-induced airway responses." Eur. Respir. J.9. 486-492 (1996)
• [文献書誌] Kageyama N: "Repeated allergen exposure enhances excitatory nonadrenergic noncholinergic nerve-mediated bronchoconstriction in guinea pigs." Eur. Respir. J.9. 1439-1444 (1996)
• [文献書誌] Miura M: "Endogenous nitric oxide modifies antigen-induced microvascular leakage in sensitized guinea pig airways." J. Allergy Clin. Immunol.98. 144-151 (1996)
• [文献書誌] Ichinose M: "Incubation with IgE increases cholinergic neurotransmission in human airways in vitro." Am. J. Respir. Crit. Care Med.154. (1996)
• [文献書誌] Ichinose M: "Incubation with IgE increases cholinergic neurotransmission in human airways in vitro." Am. J. Respir. Crit. Care Med.154. (1996)1272-1276